補足とレス - BLとBL読みを貶めるのもいい加減にしてもらいたい.

に対して予想以上の反応が返ってきた。
正直、これだけの反響を受けて戸惑っている。
元エントリは最後に引用した記事(Expired)への不快感を表明することに重きを置いていたため、図書館におけるBL所蔵の問題についてはあえて棚上げしていた。そこを不備だと言われれば、それは仕方ない。
ただし、自分としては、BLが図書館に所蔵されるべきか否かの議論と、BLとBL読みへの偏見に満ちた言論を広げることとは、別問題だろうと考える。

結果的に、BLが図書館から排除されたからといって「ほらな。お前ら図々しいんだよ、猥褻腐女子が!」(あくまでも例です。フィクションです。)などと見下すのは以ての外だし、BLの実態が外部からも理解されるようになったとして*1、「だから図書館に入れて開架してよ!」というのもおかしい。それとこれとは別の話、というやつだろう。
あくまでも、自分は記事を読んで、事実誤認や印象誘導があり誤解されかねないと感じたため、多少なりとも反論したいと思っただけだった。(そういう意味では、これだけの反響は嬉しい限り)



以上を前提として、以下元エントリの補足+ブコメへのレスなど。
今回のエントリでも、申し訳ないがBL図書館問題は一時棚上げする。*2

「BL(ボーイズラブ)」と称される(略)破廉恥な表紙の本

id:letoro_mania 「BLの表紙は全部が脱いでる訳じゃない!」とか必死杉/「表紙見ただけで全部エロって決め付けないで!」テラワロス

脱いでるとか脱いでないとかではなく、「どれもこれも破廉恥」というような言い方に反論したかった。元記事の言い方やその後の記事の内容だけだと「そればかり」という風にも取れるので。男二人が寄り添ってる/抱き合ってるはともかく、キスまでしてるのはわりとレアではないかと。
ところで、こちらの記事のコメント欄にあった
ボーイズラブはセクハラなのか? - 一本足の蛸

表紙もフェラチオあり正上位あり後背位ありで。現場を見たら誰もが驚くと思いますよ。

というのは一体どこの世界のBLですか。一応、10年近くBLを読んで、かなりのBL小説の表紙を見てきたけれど、寡聞にして表紙で本番に及んでいるBL小説本は見たことがない。かなり過激系のBLコミックのカバーや帯なら、ありえないこともないが……。多分とてもレアものなので是非とも写メを(爆

BLはポルノでは無いし、ポルノの「ようなもの」でも無い。

この部分はかなりの誤解を生んでしまったように思われる。
ここでは「ポルノ=(男性向けの)エロ」くらいの意味で使っていた。「ポルノ=エロシーンを含み、それを目的の一つとして読まれるもの」まで拡大すれば、BLの多くはポルノでもある(ありうる)と思う。また、ポルノじゃないからいいんだ、というつもりでもないし、ポルノを貶める意図も無かった。では言いたかったことは何かというと、「BLはである」ということだ。

分かりにくいかもしれないので、少し一般化してみると「ミステリはSFでは無いし、SFの「ようなもの」でもない。ミステリは<ミステリ>だ」ということと同じである。*3
ミステリに対して、人が殺されるから残虐だ(だから読んでいる人も残虐趣味だ)とか、素人探偵が謎を解くなんて不謹慎だしありえないとか、物理トリックは現実的には…、などというのは的外れもいいところだ。SFに対して、ワープとかありえねぇww だとか、あの形状だと宇宙での航行には向かない、だとかそんなのは無粋というものだ。

それと同様に、BLに対して、エロシーンがあるからポルノ(男性向けエロ)と同じだろ、だとか、同性愛に萌えるなんておかしーだろ、とか言うのはちょっと違う、と言いたい。
BLは読者対象で括るなら少女小説だし、内容で括るなら同性愛小説で恋愛小説でエロ小説でミステリだったりSFだったりもするけれど、そのどれにも属さない「BL小説」としての属性がある。*4だから、BLなんてポルノと同類だ、と言ってポルノの文脈だけで括って語られるのは間違っている。

では「BLとは何か?」というとすごく難しい。そこには女性がエロを読むことへの抑圧だのジェンダーだの、性差別だの性意識だのなんだかもう色々絡んできて、多分それだけで論文が2,3本書ける。多分、100人のBL読みがいれば100通りのBLを読む動機があって、100通りの「BLとは何か?」に対する回答がある。のでこれ以上語るのは避ける。
ちなみに、自分もBLのエロは大事だと思う。無くても読むけど、全く無いのは少し寂しい。ただやっぱり誰がやっててもいいというわけじゃなくて、背景にある関係性に萌えてこそ、ではある。

文学性、作品性で主張すれば?

まだまだそれは難しいと思う。質が、などというのではなく、やっぱりBLはBLだから。いまのところ「文学性=純文学性」な部分が大きくて、そこにBLが殴り込みをかける、というは難しいかと。BLよりは先発のライトノベルだって、やっと一部が文学としての評価を求め始めた段階なので。まあ、性愛をほぼ排除したライトノベルよりは、性愛を肯定したBLの方が純文学には近いのかなぁ、とも思うのだけれど。*5
あと、どれだけ文学的なものが書かれても「読んで」ももらえない可能性は結構高い。それは仕方ない。実際、BLの中にはその辺の恋愛小説なんて目じゃないってくらいテーマ性の高いものだとか、古典をモチーフにしたものだとかもある。
※追記
コメント欄でy_arimに指摘頂いたとおり、文学的評価に擁護の根拠を求めるというのは、「文学的に評価されない/評価されにくい」BLを切り捨てる可能性をはらむ。それらもBLを構成する大事な一要素なわけで。他ジャンルの評価軸(文学性の評価=純文学としての評価、であると仮定して)によってそのジャンルを持ち上げるというのはやはりそもそも正道とは言い難いのだろう。

ひっそりと楽しむのがいいんじゃないか!どうせ理解はされないのだから!

という主張がブコメなどで見受けられた。自分だって出来るものならそうしたい。
けれど、「BL」という市場がこれだけ成功して大きくなってしまった以上、嫌が応にも視線は向けられてしまうわけで、そこで「黙して語らず」というのは必ずしも得策では無いと思う。偏見もあり誤解も受けやすい状態だからこそ、自分たちの好きなものを守るために声を上げることも、時には必要だと思う。少なくとも、理解していない人や嫌悪している人は守ってはくれないわけだから。

また、「図書館でBLを借りる腐女子」を否定することは出来ないと思う。BLの刊行量とその流行り廃りの激しさ、レーベルの入れ替わりなどは本当に激しくて、個人で追いきれるものではない。追い切れない作品(特に比較的高いノベルズ)や古い作品を求めた若い(=経済力の無い)腐女子が図書館に頼りたくなるのも、仕方のない面があると思う。なんといってもオタクにはコンプリートしたがる人種が多いので。

必死杉

id:goingzeroid:FL_No7

好きなものを守るのに必死になって何が悪いのか?


あと、id:CAX 攻が脱がないのは表紙だけ。

*1:その時点で、BLがBLであるための何かが崩壊している気もするが

*2:それに興味がある人が多いのは分かっているが。図書館問題も出来ればきちんと書きたい。立場表明と意見は前エントリのコメント欄にも書いたので、是非そちらも参照してほしい

*3:例がSFとミステリなのは自分がミステリ読みでSF読みだから

*4:手に入らない「関係性」への萌えというのはその最たるものだと思う。

*5:純文学と性愛って相性がいいような。これも一種の偏見か?