シンポジウム『腐女子文化のセクシュアリティ』参加レポート その1

11月29日(土)に開催されたシンポジウム『腐女子文化のセクシュアリティ』に参加してきました。
告知:http://www.jase.or.jp/jigyo/sei_kenkyukaigi.html
自分の記憶メモも兼ねて、レポートします。あまり時間が無いので発表ごとに。


参加定員は200名で、8割くらい埋まっていたように思います。参加者は7:3で女性が多め?発表者は女性3人、男性1人(ただし、座長は男性)でした。

<やおい・BL>の魅力とは何か? 〜若き女子たちの「愛と性の教養書」〜  やおい小説研究家 斎藤みつ


BLとは何か?
  • 女性による、女性のための、男性同士の恋愛物語」
  • 読者は若い女性が多いが、10代から50代まで幅広くなりつつある。
オンライン書店のセールスランキング
書店の売り場占有率は?
  • 占有率が高い=売れているといえる
  • ジュンク堂池袋店・新潟店の例:少女コミックの半分くらいの面積。既に少女コミックの一部ではなく、独立ジャンルとして扱われている。
  • 書泉ブックタワーの例:独立したジャンル表示があり、最上階に置かれている。シャワー効果のため、最上階には最も売れるものが置かれる
レーベル数は?
  • 2007年の小説レーベル数:45レーベル
  • 内訳:ノベルス17、文庫24、その他ハードカバーなど4
人気作品
歴史
  • 1960年代:耽美 森茉莉恋人たちの森』『枯葉の寝床』
  • 1970年代:やおい、同人誌(キャプ翼など)
  • 1978年:JUNE創刊(影響大。後に男性同士の恋愛を扱ったジャンル名として扱われるまでになった)
  • 1990年代:BL(市場の拡大に伴って、出版社側が作ったジャンル名)
BL用語
  • 攻とは:カップルの積極的に愛する側。惚れる側
  • 受とは:カップルの愛される側。惚れられる側。
  • 攻にくらべると受は僅かであっても背が低く、容姿に女性的優位性を備えていることが多い。
  • 1996年の作品で統計を取った段階ではほぼ全てがそうだった。必ずと言っていいほど、身長や体格に関する記述がある。他の小説ではあまり見られない傾向。
  • 最近はこの傾向に当てはまらない作品もある。(体格差が少ない、体格逆転カップルなど)
  • 例:榎田尤利の「交渉人」シリーズ、トジツキハジメ『千一秒物語』、内田カヲル作品
  • カプとは、やおいとは、JUNEとは、BLとは、腐女子とは(省略)
BLの魅力とは
  • ジェンダー的要素:ヘテロ的抑圧を排除した、より対等な関係性
  • ラブロマンス要素:男同士というハードルによって高まる純愛要素
  • エロ:若い女性が手に取れる数少ないエロメディア
  • 巧妙な隠蔽(隠蔽にさえ気付かせない、巧妙な隠蔽)
  • 恋愛における能動的視点の獲得
  • → BLとは愛とセックスの理想の具現化である
  • 若い女子にとっては、初めて手に取る本格的恋愛要素とセックスが描かれたメディアになる可能性が高い
愛と性のパターン化の可能性
  • 多くのBL作品にセックスシーンが含まれることにより、愛=セックスとなる可能性もあるのではないか
  • 行為に至るまでの関係を濃密に描く作品もあり、多様性は確保されている
質疑:小説とマンガの読者層の違いは?

年代はあまり変わらないが、マンガより小説の方がマーケットとしてはコアといえるかもしれない。マンガは気軽に読めるが、小説は「BLを読もう」と思わないと読まない

質疑:「女性による女性のための作品」というが、男性作家はいないのか?また今後男性作家が現れる可能性は?

商業BLではかつて一人いたがあまり売れずに消えたようだ。統計などではなく読者として観測している範囲なので、他にまったくいないとは言えない。
男性の感覚も変わりつつある。セカチューを楽しむ男性や少女漫画を楽しむ男性もいる。そのような層から、今後男性BL作家が生まれる可能性はあると思う。


所感

本人の年齢のためか、例として示された作品が少し古い?崎谷は固定ファンがいるから出せば売れるけど、それほど人気という印象は無い。書いている量や売れ行きで見れば南原兼や森本あき、榎田尤利、橘かおるあたりの方が多いのではないかなぁ。
非BL読者へのBL紹介、といった感じ。どちらかというと小説寄り。考察やデータは少なめ。