大阪府のBL有害指定の審議過程が劇的展開過ぎる件

BL雑誌が有害指定されたー!という話から一ヶ月。そろそろ5月の有害指定が出る頃かと思って大阪府のサイトに行ってみたけど、まだ公開されていなかった。(6月2日現在)
大阪府/「有害図書類」指定一覧
過去に指定が無かった月というのは無いようなので、そのうち出るでしょう。反響が大きくて審査が慎重になってるのかな。そうならいいけど。


で、代わりにこんなものが。
大阪府/ボーイズラブの有害図書指定について
ふむふむ、言い訳を公開したか…と思いきや、審議過程へのリンクが。おお! 審議過程を公開するなんて太っ腹やね大阪! ガラス張りの行政だね! と喜び勇んで読んでみる。
大阪府/審議経過(大阪府青少年健全育成審議会第2部会議事録)
以下ツッコミとか感想とか。引用の強調は筆者によるものです。


まず一回目。

日  時   平成21年7月29日(水)

意外と早い段階から検討してたらしい。

ボーイズラブは、女性が理想と考える恋愛をテーマにしており、その内容は純粋な恋愛を描いたものがほとんど。

理想。理想の恋愛ね。まあ、そういう捉え方もあるかもしれない。個人的には駄目駄目で愚かな恋愛を描いたBLの方が好きですが。

なかでも育児中の女性に人気がある。

えええええww 初耳ww
未婚とか既婚とか若い女性とかじゃなくて、育児中、ってなに。間接的に青少年に悪影響があるとでも言いたいのか。しかし、成人女性がご家庭で何を読もうと、それは自由ではないかしら?

・以前は同性愛は異常性欲といわれてきたが、現在ではひとつの愛の形として認知されている。性描写が基準に満たない場合、同性愛を扱っているという理由だけで指定するのは難しい。
・一般にも同性愛をテーマにした舞台が流行っており、「同性愛=嫌悪感」と捉えることには疑問を感じる。
ボーイズラブが大多数の青少年の性的感情を刺激するのか問題となるが、「刺激」には「興奮」する刺激もあるが「嫌悪感」が「著しく刺激」と考えられるのか
・規則4条1項3号で、「異性間若しくは同性間」と規定されているので、内容が同性愛であっても指定できるのではないか。

このへんボーイズラブに関する戸惑いが感じられる。同性愛だから指定するのか同性愛じゃないから指定しないのか。どっちもどっち、どうかと思います。

・ストーリーが純粋かどうか、題材が同性愛かどうかではなく、「露骨な性描写がある」ということで、女性向コミックと同じように有害指定するべきである。ストーリー性の捉えかたなどは人によってまちまちであるからこそ青少年健全育成条例規則4条の基準に当てはまるものは従来どおり指定するべきである。
ボーイズラブが大多数の青少年の性的感情を刺激するかどうか。青少年が見てどう思うか、が問題である。単に性器が写っているからダメというわけではない。
ストーリー性を問うなら、今まで指定してきた女性向コミック誌も内容が純粋なので指定しなくてよいという結論になる。
何が「純粋」かについては、捉え方が人によって違うからこそ、露骨な性描写によって指定する、ということにすべき。
・女性向けコミックの場合、露骨な性描写があれば、「卑わい、扇情的な感情を与えるもの」として指定してきたので、ボーイズラブについても露骨な性描写を基準とすべき

お説ごもっとも。性器があるから駄目とか隠れてればいいとか、そういう話じゃない。純愛だからいいって話でもない。今更「ボーイズラブだから特別」っていうのは逆差別みたいな話になっちゃうし。

・そもそも有害図書指定は、われわれ大人が見て「青少年を刺激する」と考え、「これを読むと青少年の健全な成長を阻害するだろう」と判断したものを、指定してきた。
・本来、条例の保護法益は、青少年の健全育成。しかし実際には、「見せたくない」という大人の感情を元に指定しており、そこにずれがある。性的道義観念を阻害するものというが、性的道義観念は個人差が大きい。だからこそ、有害図書の指定は謙抑的に考える必要がある。

この発言には拍手を送りたい。
青少年の立場に立ったっぽい発言もある。俺も昔は隠れてエロ本読んでたしー、って感じなのかな。
何でもかんでも有害!有害!ってやればいいってものじゃないんですよ!なるべくなら自主規制とか家庭での指導とかに任せて、どうしてもというときに出してこそありがたみもあるってものですよねー。



と、一回目の議論を見る限りでは慎重論に寄っているひともおり、意外にバランスのいい議論がされているという感じ。


さて、二回目。

日  時   平成21年12月7日(月)

結構間が空きましたね。4ヶ月ちょっと。慎重に調査をしていたということでしょうか。

前回は反対の立場であったが、やはり性描写が激しく、青少年に与える「刺激」が著しいと考える。
男女間であれば、これらの性描写は有害図書指定しているのではないか。
同性同士だからという理由だけで指定しないのは、逆に変ではないかと思われるので、指定するべきではないか。

な・に・が・あ・っ・た!!!!!
手のひらを返したかのように積極指定に傾いている。よっぽど酷い作品でも読まされたのか。この豹変っぷりは……。
ただし、この段階でも慎重論はあり、

・指定については、まずは性描写の著しいものから慎重に議論し、個別指定していくべきと考える。
ボーイズラブについては性描写の激しいものについて有害指定する方向で、指定方法については個別指定でということでいきたいと考える。

あくまでも、過激で本当に有害なものを、という姿勢が見える。


そしてやってきた4月26日。

図書11点の有害図書類指定について、諮問。
出席委員8名が図書11点それぞれについて審査した結果、全員一致で有害図書類として指定することに決定。

慎重論どこいった…orzorz
4月の有害指定がザルでピンからキリまで指定されすぎ、というのはその後の検証などで明らかになっています。
二回目以降欠席した委員もいるようなので、慎重論を持っていた委員が欠席して、積極派の委員が加わったのかも。…それでいいのかorzorz
各回委員比較。打ち消し線が不参加の委員。
第一回

功野委員、礒野委員、大塚委員、岡崎委員、興津委員、金田委員、
園田委員(部会長)、森田(明)委員、森田(英)委員、吉村委員

第二回

功野委員、礒野委員、大塚委員、岡崎委員、興津委員、金田委員
園田委員(部会長)、森田(明)委員、森田(英)委員、吉村委員

第三回

功野委員、礒野委員、大塚委員、岡崎委員、興津委員、金田委員
園田委員(部会長)、森田(明)委員、森田(英)委員、吉村委員

参考:http://www.pref.osaka.jp/koseishonen/jorei/ikuseisingikai_meibo.html


まあ、この議事録自体、かなり取捨選択されているでしょうし、最初から積極規制派が大勢を占めていて慎重派を説き伏せた、という可能性はあります。そもそも慎重論はアリバイだったということも…さすがに穿ち過ぎか。


あと、下のほうに「主な該当ページ」の表があるのですが、検証した方によると確かに激しい描写があるものの、同作品内でもっと過激な描写があったり、麗人に至っては何故か全て指定ページが着衣のシリアスorイチャラブシーンという意味不明の状態らしい。なんだかなぁ…。
[BL雑記]大阪府でのBL雑誌「有害図書指定」で、どのページが「該当ページ」か発表されたので、どんなページか確かめてみました ――『drap』10年7月号の過剰修正問題とあわせて


drapの修正も、性器があれば悪いとか性器が隠れてればいいとかいう話ではないので、どうかと思うわけですが。
とりあえず、過剰修正と評判のdrap7月号とdrapのバックナンバー(5月号は手に入らなかったので1月号)を入手してきたので、近いうちに比較検討したいと思います。
あと、「私たちの愛してきたBL」を奪わないでっ!という意見があるようですが、そもそも「あなた(かつての青少年)が愛していたBL」と「今の青少年が楽しんでいるBL」が果たして同じものなのか、という検討も必要かと思います。全体的にBLが過激化の傾向にあるのは事実だし、10年前・20年前に比べれば市場規模はケタ違いで入手しやすさも全然違うよね。