「泣き虫弱虫諸葛孔明」 酒見賢一

泣き虫弱虫諸葛孔明

泣き虫弱虫諸葛孔明

いわゆる、諸葛孔明の知られざる実像に迫る、みたいな小説。語られるのは、孔明の少年時代から、劉備に使えるまでの部分。
しかし、冒頭で「ちかごろ、わたしにもようやく諸葛孔明の偉大さが分かってきた。」などと書いているわりには、あんまり孔明を讃えていない(ような気がする)。描かれているのは、孔明が(そしてその他の三国志の登場人物達が)いかに奇人変人だったか、ということばかり…(のような気がする)。
まあ、それでも皆さん愛すべき人々であることには変わりなく。随所に入る冷静なツッコミも素敵です。恋する乙女のように徐庶を追っかける劉備様(でも浮気性)とか(苦笑)かなりツボにはまりました。
だって、事情があって自分の元を去ろうとする軍師(てか、自分が行きなさいと言った)を追って、「あと少しだけ…」「もう一町だけ…」とか言って、ストーカー紛いの見送りをした上、「あの方が行っちゃう!」って錯乱して、挙げ句の果てに「あの方の後ろ姿を見送るのを邪魔する林なんて伐り払ってしまいたい!」とか言い出す主君ですよ?!しかも、その後何故か根拠もなく「きっと戻ってきてくれる!」とか確信してるし。これはやはりもう、アナザー・ワールドに逃避する以外…。