「扉は閉ざされたまま」 石持浅海

扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)

扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)

表紙が微妙な(笑)石持さんの新刊。中身は最高でした!
まず、石持作品では初(?)の倒叙もの。自分は推理しながら読む方ではないので、倒叙の方が論理だけを追えて好きなだったりします。
そして密室もの、なのですが、タイトルからも分かるとおり、密室の扉は閉ざされたまま。それはつまり、密室はもちろんのこと、その中で犯された犯罪も、まだ衆目にさらされてはいない、ある意味ではまだ事件は起こっていないともいえるわけです。
あるのは多少の異常を感じさせる状況と、犯人を含むメンバーの行動と会話という手がかりだけ。そんな状況で繰り広げられる探偵役と犯人の論理による駆け引き。そして導かれる論理的な解答。
いくつか目につくものはあるものの、殆どの伏線は限りなく自然に引かれ、それでいて後で指摘されると納得してしまうとしか言いようがないし(むしろ、そうだからこそ普通の伏線が目立ってしまったとも…)とても「綺麗」な作品でした。
でもって、石持作品独特の、物理的なものだけでなく、関係者の心理によって作られる閉鎖状況も健在。
唯一、犯人の動機が万人に納得出来るものではない、というこれまた石持作品の特徴も健在ですが、それも犯行動機だけでなく、密室動機(造語です;)にまで絡ませた時点で充分許せる気がするし。
満足の一作でした。