ジェフリー・ディーヴァー ──世紀のどんでん返し職人

※ミス研の部誌に掲載した作家レビューです。

 ジェフリー・ディーヴァーは一九五〇年イリノイ州生まれ、カリフォルニア在住。元弁護士で、シンガーソングライターや雑誌記者などの職を経験している。
 ミステリ作家としては『汚れた街のシンデレラ』でアメリカ探偵作家クラブ賞のペイパーバック賞にノミネートされ、以後いくつかのシリーズや単発作品を発表している。
 日本では誘拐犯とFBIの人質解放交渉の駆け引きを描いた『静寂の叫び』で評判を博し、その後ほぼ全身不随の安楽椅子探偵リンカーン・ライムとその仲間達が科学捜査を駆使する『ボーン・コレクター』で一気にブレイク、この作品をシリーズ化したリンカーン・ライムシリーズは翻訳されるたびに海外作品のランキング上位に名を連ねる人気シリーズとなっている。シリーズ外作品にはインターネット犯罪を中心に据えた『青い虚空』、筆跡鑑定士パーカー・キンケイドを主人公とした『悪魔の涙』などがある。また、短編の名手としても知られ、日本では初の短編集『クリスマス・プレゼント』が二〇〇五年に出版された。
 というわけで、ここまでに出てきた作品を全部読んでください。紹介終わり。……としたいのは山々であるが、さすがにそれでは無責任というものか。
 ジェフリー・ディーヴァー(以下JD)作品の魅力は、何と言ってもそのスピード感と繰り返されるどんでん返しにある。勢いのあるサスペンス作品をよく「ジェットコースターのような」と形容するが、この言葉はまさにJD作品にこそ相応しい。一度読み始めたら止まらないリーダビリティは、妥協することのない執筆姿勢から生まれている。その上、読者が犯人を推測しはじめた所を突いてひっくり返すどんでん返しは、まさに職人技と言える。また、JD作品は海外作品としてはキャラクターも比較的立っている。ライムシリーズを例に挙げれば、有能だが我が侭な安楽椅子探偵ライムに、手足となって働く行動派女性捜査官アメリア、さり気なく捜査陣をフォローする介護士のトム、FBI捜査官フレッドや科学分析官クーパーなど、適度に特徴付けられたキャラクター達は、作品世界への足がかりとなってくれる。読み始めたら一瞬たりとも退屈させない。JD作品は読者の快楽のために奉仕する、極上のエンターテイメントなのである。
 もちろん、ミステリとしても十分に質が高い。毎回現れる謎の犯人、リアルタイムで繰り広げられる犯人との先読み合戦、犯人へと至る手がかりの収束など、こちらも油断を許さない。随所で繰り返されるどんでん返しさえ、読み込めば伏線が存在する。この緊張感、そしてどんでん返しの連続は一度味わうとかなり癖になる。
 というわけで、貴方も癖になってみませんか?