「アヒルと鴨のコインロッカー」伊坂幸太郎

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

自分にとっては久々の伊坂長編。ミステリかどうかは微妙なところなので、とりあえずその他で。というか間違いなく叙 述ではあるのだけども、伊坂が書くとそう思えないのは何故だろう??
陽気なギャングみたいな疾走感はあまりなく、むしろじわじわと物語が染み込んでくる感じの話ですね。軽快なテンポもセリフもいつもどおりなんだけど、どこかもの悲しいような。ボブ・ディランの「風に吹かれて」もYouTubeで聞いてみましたが、なるほど、という感じ。つか、これ歌いながら本屋強盗って……かっこいいなぁ(笑)結末も、騙された!という驚きよりはしみじみとしたため息の方が先に来るような、そんな話です。伊坂は登場人物の「変化」を描くことが多い作家ですが、今回は特に人が人にあたえる影響、みたいのがすごく見えて、考えさせられる作品でもありました。
ただ、読む前に求めていたのはどちらかというと爽快感だったのもあって、ちょっと物足りない感じではありましたが……。「ラッシュ・ライフ」ほどに複雑でなく「オーデュボン」ほどに突飛でもなく。まあ、人に勧めやすい感じではありますかね。
もちろん、伊坂作品の中では、というだけで、それを抜きにすれば十分好きなんですが。特に最後の方の「神様を閉じこめにいかないか」のシーンとか。現地を結構知ってるのですごくよかったです。きっと今度行ったら、ロッカーに耳を澄ませてしまいそう(笑)
どうやら映画化する(された)らしいですが、キャストを見ると、松田龍平が「河崎」なのかな?「僕」って歳でもないし。ただ、この仕掛けを一体どうやってやるのか期待半分・警戒半分って感じですかね。作者は納得してるらしいので、そんなにひどくはないのでしょうが。ま、どっちにしろ伊坂作品で仙台ロケってだけで十分見に行く気満々なわけですが(笑)