「赤朽葉家の伝説」桜庭一樹

赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の三代の女たち、千里眼の祖母万葉、漫画家の母毛鞠、そしてニートのわたしこと瞳子の物語。
全てが、上手いなぁ、という感じ。例えば三人の女たちは、現代から見たそれぞれの時代を象徴している。まだ神話や伝説が生き、「家柄」というものが大きな力を持っていた時代に、山の民から庶民の家庭へ、そして旧家の主となった万葉。高度経済成長、バブルの時代に生き、成功者となった毛鞠。そして「いま」にあって生き方を見つけられない「わたし」。それぞれは模式化された生き方に過ぎないのだけれど、少なくとも現代に生きる私たちの感覚にはぴったりはまっていて、何かを感じさせてくれる。
もう一つ、上手い…というかリアルに感じたのは、田舎の集落というものの描き方。実家(東北の片田舎)で読んだのもあって、あまりのリアルさに驚いてしまったくらい。
物語を貫くもう一本の芯となっている、「飛ぶ男」の謎もさりげないながら利いている。最後の謎がするりとほどける感じはかなり自分好みでした。